2013.07.01
青葉通信7月号 巻頭言
事業所長 武者明彦
7月に入りましたが、本格的な夏はもう少しお預け、梅雨明けはまだ先のようです。この季節には、濃い緑の葉に純白の花の対比が美しいクチナシが、いい香りを漂わせています。
今年6月に国会では障害者に関係する法律が相次いで可決成立していますので、その概略を追ってみます。
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- 改正障害者雇用促進法が成立しました
6月13日には、精神障害者の雇用を企業などに義務付ける、「改正障害者雇用促進法」が衆院本会議で可決成立しました。これまで対象としてきた身体障害者と知的障害者に、新たに精神障害者を追加するもので、これに伴い企業に義務付ける障害者の法定雇用率も上がる見通しです。企業の準備期間を考慮し、制度を弾力的に運用するための激変緩和措置を盛り込み、義務化は5年後の2018年4月からとなります。
改正法では、事業主に障害者への差別を禁止し、障害の特性に配慮した施設の整備や、援助者の配置なども義務づけています。ようやく障害種別による障壁が一つ取り除かれることになったことを、就労に向けて頑張っている皆さんとともに喜びたいと思います。
- 改正災害対策基本法が成立しました
6月18日には「改正災害対策基本法」が成立し、市町村には災害弱者である高齢者や障害者、乳幼児など「避難行動要支援者」の名簿作成が義務付けられました。この名簿は本人の同意を得た上で消防や警察、民生委員、自主防災組織などに提供できること、命の危険がある場合は同意を得ずに情報を提供できることが盛り込まれました。
東日本大震災では、多くの自治体で個人情報保護の壁に直面しました。名簿作りに二の足を踏む、名簿を作成しても避難支援者への提供はもちろん、自治体の中でも情報共有しないなどのケースが目立ち、安否確認さえできない状況が生まれました。大震災の犠牲者の約65%が60歳以上、障害者の死亡率が2倍であったというデータもあります。避難所生活で特に支援が必要な高齢者、障害者、外国人らへの支援が行き届かない状況は、現在も続いています。災害対策は国や自治体任せにするのではなく、住民やボランティアの力も発揮できる仕組みづくりが必要です。
- 障害者差別解消法が成立しました
6月19日には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が、参議院本会議で可決成立しました。公共機関や民間企業に対し、障害を理由とした不当な差別的取り扱いを禁じ、過重負担にならない限りは施設のバリアフリー化を進めるなどの合理的配慮を求める内容となっています。条文では、障害者や家族が意思表示したのに障害に応じた合理的配慮をしないことを禁じ、障害者の性別や年齢、障害の状態に応じて「社会生活上の障壁」を除去するよう求めています。
合理的配慮は、行政機関(国、自治体、公立学校、福祉施設など)に対し法的に義務化し、民間事業者に対しては努力義務にとどめましたが、実効性を持たせるため国が事業者に報告を求め、報告しなかったり、虚偽報告をしたりした場合の罰則規定も設けました。施行は3年後の2016年4月で、政府は今後何が差別に当たるかなど、基本方針を策定することになっています。政府が目指す国連障害者権利条約の批准に向けた国内法整備の一環で、改正障害者基本法で障害者への差別禁止が定められたことを受け、差別解消策を具体化するため制定したものです。
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- ワン・コイン募金にご協力を
今年も被災地での直接支援に合わせ、第三次「ワン・コイン募金」として一人500円を目標に実施し、ゼンコロを通じてJDFの支援活動の資金に充ててもらうことにいたしました。7月中が募金期間となりますので、ご協力をお願いします。