2015.6.15
青葉通信6月号巻頭言
事業所長 武者明彦
今年は梅雨の前に夏日が来てしまい、季節感が例年と違うような気がします。それでも庭先にはアジサイ、ナンテン、キョウチクトウ、クチナシなどが咲き始め、足元を見るとドクダミやハンゲショウ、ツユクサなど梅雨時の草花が独特の空気感を醸し出しています。さて本稿では、工賃について考えてみることにします。
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■2014年度の工賃実績
2014年度の工賃実績報告書によると、当センターの就労継続支援B型事業が支給した利用者工賃の年間総額(法定福利費等を除く工賃支払総額)は26,145,005円でした。昨年度の対象者の延人数は1,101人だったので、一人月額平均工賃は23,746円、時間額では257円になります。ここで言う当事業所の工賃は、利用者に支払った総額のことであり通所手当や実習手当、賞与などを含んだものです。また対象者の延人数は、その月に1日でも利用実績があった人すべてを合計して出しているので、利用者全員が毎日(年間242日)を利用しているわけではないことを考えると、単純に月額平均工賃で見ることが正しいかどうか不安も残ります。
一方時間額は、実際に工賃の対象となった時間をすべて合計した延時間数を基にしているので、実際に近い額になっているものと思います。ここでは他のデータとの比較の事を考えて時間額を根拠の数字として試算することにします。因みに、2013年度(最新データ)の東京都内の指定事業所における就労継続支援B型事業所の月額平均工賃は14,588円、時間額は207円でした。
■グループホームを想定した場合の収支バランス
当センターでは家族同居の利用者が多いのですが、ご家族の高齢化が進んでいて、これまでのように家族による支援が得られなくなる時期が迫っている方が増えています。ここでは仮に、グループホームを生活の拠点にして通所する事を想定した場合の試算をしてみると、家賃、食費(朝食と夕食)、水光熱費、日用品費に相当する利用料と、昼食代やお小遣い等を合わせて10万円ほどを見ておく必要があります。それを賄うのは、障害基礎年金(2級年金66,000円)と工賃などの収入ですが、グループホームの場合には、国と東京都の家賃補助(国10,000円、都14,000円)があるので、それが得られた場合の収支バランスを考えると10,000円ほどの工賃があれば基本的には何とかなる、という計算になります。しかし、医療費やスマホ代などかかる費用や、将来のための貯蓄など必要額はひとり一人違いますし、アパート等での一人暮らしを念頭におく場合や、ましてや年金が無い人の場合にはとてもそれでは足りませんね。
■工賃水準の目標を作る
ところで現在の東京都の最低賃金は、時給888円です。雇用契約に基づくA型の場合は、当然これを超える時間給が前提になっていますが、B型の場合でもこの最低賃金が一つの目安になります。仮に最低賃金の1/3を目標にするとすれば時間額は296円、昨年の当センターの時間額は257円だったのでもう少し頑張る必要があります。利用時間を当センターに合わせて、毎日、フルタイム通所利用した場合の一人平均月額は、最低賃金の1/3では37,308円ですが、当センターの昨年実績を基にすると32,392円になる計算です。月額5,000円程度を上乗せすることが必要になります。
■売上高目標について
当センターの2014年度の売上高は10,538万円でした。2015年度の目標は厳しい受注環境を念頭においてほぼ前年度並みの10,500万円としました。最低賃金の1/3を支払おうとすると、同様の条件で試算した場合に必要な売上高は11,000万円ほどになります。2015年度の目標にさらに500万円ほどの仕事を上乗せする必要があるわけです。
当センターでは受注対策として、これまでは2名の営業専任従業員(目標工賃達成指導員)を3名体制にしました。営業活動を通じてさまざまな取引先からお預かりしている仕事、即ちメールサービス、データ入力、清掃、ヤマトメール配達などの受託作業の売上や、物品販売による収益の合計である就労支援事業収入(売上高)が工賃の基になるので、受注対策は必要不可欠です。また、費用(変動費と経費)を極力減らす事や、安心して仕事をお任せいただけるように、ミスを起さない正確な仕事を行うことも重要な要素です。簡単なことではありませんが、グループホームで自活できる水準の、最低賃金の1/3を当面の工賃目標とする事。絶対無理な内容ではないとも思えますが、如何ですか。
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梅雨時は食中毒のシーズンでもあります。食中毒予防には、手を洗うことが何よりも重要で、調理の前、生ものにさわった後、食事の前、何をおいてもまず手洗いすること!だそうです。昼食の前にはしっかり(正しい)手洗いをお願いします。