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成年後見制度⑩ 最終回

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 司法書士 高橋 聡英

前回(2015/5/22)の続き

 

前回の「後見制度支援信託」について、例を用いて説明します。

青葉さんは、その子供である松男さんと二人で暮らしています。青葉さんには、他に亡き夫との子供の竹男さん・梅子さんがいますが、この二人は独立して別の場所で生活しています。青葉さんは自分亡き後の松男さんの生活が心配です。住む場所の確保・生活費の管理などをきょうだいに任せたいと考えるものの、それぞれの生活があります。

青葉さんが亡くなった場合、その財産はどうなるのでしょうか

1 青葉さんが何の対策も取らない場合

法定相続分という決まりに従い、松男さん・竹男さん・梅子さんにそれぞれ3分の1ずつの財産が引き継がれます。これを違う割合とする場合や、ある特定の財産、例えば不動産を一人のものにする場合には3人での話し合い(これを「遺産分割協議」といいます)によって行います。松男さんに財産管理能力がない場合、相続財産がなくなってしまう可能性もあります。

 

2 遺言書を書いた場合

青葉さんは、自分の死後、自己の財産をどのように分けてもらうかを遺言書で決めることができます。財産の行方について一定の方向性を定めることが可能です。

①松男さんに居住用の建物を残すなど、松男さんが生活できるように財産を相続させる指定をする。

②竹男さんまたは梅子さんに多めに財産を相続させる代わりに、松男さんの面倒を見てくれるように指示する(「負担付遺贈」といいます)。

ただし、遺言書を書いたからといって、すべてが青葉さんの思い通りに実現されるわけではありません。②の場合でもきょうだいが十分に面倒を見ないということもあり得ます。

 

3 信託制度の利用

青葉さんの生前から松男さんについての成年後見制度を利用し、そのなかでさらに信託を利用します。青葉さんは、自己の死亡後にも松男さんが受益者となるようにして、松男さんの生活費などを確保できるようにします。

後見制度とともに行う信託制度は運用が始まってからまだ日が浅いため、事例の積み重ねはこれからです。

 

~終わりに~

後見制度や信託を利用すれば何もかも解決する、というわけではありません。将来のことは誰にもわからないのですから。しかし、後見制度、遺言、信託など複数の制度を活用することで、将来を今よりも少しでも見通すことができる可能性は増えるはずです。

これまでお読み頂きましてありがとうございました。

(終わり)

 

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