2012.10.01
青葉通信10月号 巻頭言
事業所長 武者明彦
台風一過。吹き散らされた木の葉や小枝を掃き集めるほうきの先にキキョウが涼やかに咲いています。キキョウは紫の5裂の花弁も品があってよいのですが、開花直前の丸くふくらんだ状態がなかなか面白く、英名でバルーンフラワー(Balloon flower)と呼ばれるのももっともに思えます。
さて、昨年6月に成立した「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(以下、障害者虐待防止法)」が、今年10月1日から施行されることに先立って、9月11日に、東京コロニー主催の「障害者虐待防止法」学習会が、中野サンプラザを会場に各事業所の従業員を対象にして開催されました。講師は当法人の顧問弁護士である仁科豊さんです。大変重要な中身を持つ法律なので、当日説明用に提供されたパンフレットを参考に、法律の概要をお伝えします。(以下、東京法規出版パンフよりダイジェスト)
**********
虐待は障害者の尊厳をおびやかし、自立や社会参加を妨げます。虐待は絶対にあってはならないことですが、虐待と気づかないままおきているおそれもあります。障害者の虐待は、特定の人や家庭、場所ではなく、どこの家庭でも起こりうる問題です。虐待している人に、虐待している認識がない場合があります。虐待されている人が虐待だと認識できないで、自分から被害を訴えられない場合があります。そのため、虐待を防ぐためには、住民一人ひとりがこの問題を認識して、小さな兆候を見逃さずに早期に発見することが大切です。障害者虐待に気づいた人には、区市町村の担当窓口への通報義務があります。地域ぐるみの早目の対応や支援が、虐待されている障害者だけでなく、虐待している家族などがかかえる問題の解決にもつながります。
障害者虐待防止法では、虐待を次の3つに分けています。
① 養護者による虐待:障害者の生活の世話や金銭の管理などをしている家族や親族、 同居する人による虐待。
② 障害者福祉施設従事者による虐待:障害者施設や障害福祉サービスの事業所で働いている職員による虐待。
③ 雇用者による虐待:障害者を雇って働かせている事業主などによる虐待。
また、障害者虐待の例としては、具体的に5つの項目を挙げています。
① 身体的虐待:障害者の体に傷や痛みを負わせる暴行を加えること。また正当な理由なく身動きが取れない状態にすること。
② 性的虐待:障害者に無理やり(また同意とみせかけ)わいせつなことをしたり、させたりすること。
③ 心理的虐待:障害者を侮辱したり拒絶したりするような言葉や態度で、精神的な苦痛を与えること。
④ 放棄・放任:食事や入浴、洗濯、排せつなどの世話や介助をほとんどせずに、障害者の心身を衰弱させること。
⑤ 経済的虐待:本人の同意なしに障害者の財産や年金、賃金などを使うこと。また理由なく金銭を与えないこと。
障害者虐待では、虐待をしている側の家族など擁護者にも支援が必要な場合が少なくありません。介護疲れや障害への知識不足、家族間の人間関係、擁護者自身の障害など要因はさまざまですが、虐待をしてしまう擁護者を含む家族全体を地域ぐるみで支援することが根本的な虐待防止につながります。擁護者へのサポートの例として4点が示されています。
① 負担を軽くする:障害者の短期入所など障害福祉サービスの利用で、擁護者の介護負担を減らし、冷静になれる時間や休息できる時間をつくる。
② 心のケアをする:カウンセリングの利用や家族会への参加などで、精神的に追い詰められた擁護者の心を癒し、家族関係の回復にもつなげてゆく。
③ 知識や技術を増やす:障害に関する介護への知識や技術不足が虐待につながらないように、専門家の助言や指導によって、障害への正確な知識や情報などを提供する。
④ 専門的支援を行う:病気や経済問題など擁護者自身が支援を必要としている場合は、専門機関からの支援を行う。
**********
障害者福祉の現場にいる従業員は、障害者虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、早期発見に努める必要があります。今後もこうした研修などを通じて人権意識や、権利擁護の意識を高める取り組みを進めてゆくことが重要です。
ところで土曜日の青葉祭は楽しかったですね。もう疲れは取れましたか。これからは過ごしやすく気持ちの良い日が多くなってきます。日ごろの運動不足解消にスポーツなどで体を動かしてみるのも良いかもしれません。