司法書士 高橋 聡英
前回(2014/2/10)の「そもそも『成年後見制度』とは」の続き
前回の話をここで簡単にまとめてみます。
「代理」とは、「何かをしなければならないが、本人がそれをできない」状態である場合に、本人に代わってその「何か」を行ってもらうことです。本人ができない理由は次の二つです。
一つには、「時間をかければできるけれど、その時間がない」、「簡単だけど、忙しいので無理」、という類いのものです。
もうひとつは、「やりたいことについて、自分の理解力などが不足している」という場合です。裁判、税務申告、登記、特許の取得の手続などは専門知識を必要とする手続であり、専門家以外の方にとってはその手続が理解しにくいものです。また、普通は誰でもできることでも、できない場合もあります。代表的な事例として、アルツハイマーなどによって判断能力が低下し、文章を理解したり、日常の買い物などができなくなってしまうことが挙げられます。成年後見制度は、このような場面に対応するためのものです。
4.想定される場面
判断能力が不十分な方々に生じうる場面についていくつか挙げてみましょう。
その1 高齢者など、判断能力が不十分な消費者の被害
独立行政法人国民生活センター発行の「消費生活年報2012年」には、「高齢者の相談が増加し、中でも『ファンド型投資商品』『公社債』などの怪しい出資やその二次被害に関する相談が目立った。」との記載があります。
また、知的障害者・精神障害者については、「携帯電話サービス」「キャッチセール」についての被害が目立つほか、「デート商法」などの被害が目立つとの報告がされています(特定非利活動法人成年後見相談センター・ラパス「知的・精神障害を持つ人の消費者被害の実体と対策」)。
これらは、判断能力が不十分であることにつけ込んだものと言えます。
その2 相続が発生し、財産を分けるときに起こりうること
父または母が亡くなって、その亡くなった方(「被相続人」といいます。)の財産について、相続人である子供達が財産を分ける場面を想像してみてください。たとえば、子供が3人の場合、法律で決まっている相続分(法定相続分)は、皆同じ割合、つまり3分の1ずつです。ただし、この割合を変えたり、「自宅の土地・建物と借入金(債務)は長男が、預貯金は次男が、賃貸物件は三男が、それぞれ相続する」という話し合いをすることもできます。この話し合いを「遺産分割協議」といいます。子供の中に、自分の権利について認識ができない者がいる場合に、その者が不利になるような遺産分割協議がされてしまうことがあります。(続く)