2014.07.15
青葉通信7月号 巻頭言
事業所長 武者明彦
もうすぐ梅雨明け、本格的な夏はもう少しです。庭先では純白のクチナシやキョウチクトウが終わりかけ、ムクゲやサルスベリが目立ってきました。
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さて当センターでは、上半期の個別支援計画見直しのための面談が進んでいます。97人の利用者を中心にそのご家族、支援機関やグループホームの職員さんを交え、様々なお話を聞かせていただいておりますが、ほぼ3カ月にわたっての面談も今週で一巡することになります。本稿では、面談を通じて把握することができた利用者の生活面の変化を背景に、今後必要となるのであろう支援の方向を考えてみたいと思います。
トーコロ青葉ワークセンターは、養護学校(現在の特別支援学校)の卒後の受け皿が欲しいという切実な要請に応えて1990年にオープンしました。以来24年が経過し、当時18歳だった利用者は42歳になり、同居する家族のほとんどが70歳代に差し掛かっています。通所施設は日中支援の場所ですが、家庭での生活が維持できなくなれば通所もできなくなるので、面談では、ご家族が高齢になって支援が得られなくなる前に何か準備をしているかどうかをお尋ねしています。従来の個別支援計画には施設内での作業やプログラムを通しての支援内容が記載されてきましたが、それとは別に、生活場面の事柄について状況を把握し、可能な限り支援して行く方向に重点が移っています。年を経るごとに相談内容も深刻さを加え、利用者支援というよりもそのご家族についての支援が必要なケースも増えてきているように感じます。この度の面談を通じて浮かび上がってきた97人の利用者の、生活面を中心にした状況を以下にまとめてみます。
① 昨年度(2013年度)末の利用者総数は100人(身体障害者16人、知的障害者59人、精神障害者25人)、平均年齢は37.4歳、在籍年数は9.4年でした。年齢分布では最近特別支援学校などを卒業して利用開始した10代、20代は23人、30代が30人、40代が35人、50代が12人で、40歳以上で約半数を占めています。
② 利用者97人中、家族(親、兄弟)同居の利用者は70人です。家族の高齢化も著しく進んでおり、父親または母親と二人暮らしの利用者も増えています。また、家族が要介護や要支援となっていて、精神障害がある利用者が支えとなっている家庭もあります。こうした背景もあって、グループホームへの関心が、急激に増してきています。
③ 現在グループホームで生活している利用者は、3人が新たに利用を開始して12人になりました。また近い将来のグループホーム利用を想定して、見学や短期入所(ショートステイ)を希望する利用者(家族)は24人いました。この中にはすでに短期入所を試したことがある5人が含まれています。
④ 近い将来グループホームをと考えている利用者(家族)のうち、グループホームを親亡き後の生活の場と考えている家族は17人に上りました。一方グループホームを利用するには家賃などの費用も掛かるため、経済的不安から二の足を踏む家族も複数あります。
⑤ 自宅やアパートなどで一人住まいないしは家庭生活を営んでいる利用者が14人いますが、そのうち8人が訪問看護や居宅支援(ホームヘルパー)、移動支援、成年後見制度等の社会資源を活用しながらの地域生活となっています。また、生活保護の受給者が13人いますが、ほとんどがグループホームや公営住宅、アパートで独居している利用者で、生活保護が地域生活の最後の支えとなっています。
⑥ 障害基礎年金の無い利用者が15人います。そのうち9人は年金が無く生活保護も受給していません。未成年者の場合、今後申請により年金を受けられる可能性がありますが、どちらの受給もできない場合、家族の支援が受けられなくなったときの経済基盤をどうするのかの心配につながります。就職して独立できればそれに越したことはありませんが、施設での就労の場合、残念ながら今の工賃レベルは地域生活を支えられるだけの金額にはなっていません。
以上のような利用者の状況を踏まえ、当センターとしてできる支援は、
① 面談結果を踏まえて、市の担当窓口や計画相談事業所に対し、サービスを必要としている背景を伝え、利用できるよう後押しをしてゆくこと。利用可能な社会資源の情報を利用者(家族)に伝えて行くこと。地域生活支援センターへの登録を促してゆくこと。
② 知的障害のある利用者の多くが家族と同居しており、親の高齢化や親亡き後の生活への不安が大きくなっているので、グループホーム移行を希望する利用者について、この半年をめどに見学から短期入所利用の流れに乗せて行くこと。
③ そのための準備として、家事の手伝い、清掃、買い物、着替え等、自分でできる事を増やすため、家庭と連携して支援すること。また、休日の過ごし方を豊かなものにするため、公共交通機関の利用や移動支援の活用などを促すこと。
④ 地域生活を安心して営む上で必要となる成年後見制度の理解を進めるために、青葉通信とホームページに司法書士による解説を連載してゆくこと。また年末に研修会を開催すること。
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当センターでは、グループホームへの関心が急激に増してきていますが、最も大きな課題は、通所可能な範囲にグループホームが少ないことで、必要になった時に希望すればすぐに利用できる状況にないと言う事です。またせっかく空きがあっても、ためらいがあったり、準備不足だったりしてタイムリーに利用に結びつかなかった事例が過去にもあります。機会をとらえて情報をお伝えしてゆきますので、心構えと準備を進めていきましょう。