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病棟転換型居住系施設

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2014.06.15

青葉通信6月号 巻頭言

 事業所長 武者明彦

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散歩プログラムで多磨全生園を散策してきたメンバーが、ベニバナをたくさん抱えて戻りました。園内でベニバナ摘みをしていた方から頂いたとのこと。当センターの玄関に飾りましたが、殺風景な空間に鮮やかな紅色が映えます。

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国は3年ごとに障害福祉計画の見直しを行い、自治体はその期間に合わせて3年ごとに福祉計画を作成することになっています。現在は第3期障害者福祉計画期間に当たりますが、平成27(2015)年から29(2017)年までの第4期計画を策定するに当たり、国は基本指針を見直して、障害者が地域で暮らせる社会を基本理念に、具体的な成果目標として以下の4項目を検討しています。

①施設入所者の地域生活への移行
平成25年度末の施設入所者数(132,763人)を基準として、第四期障害者福祉計画期間が終了する平成29年度末までに、地域生活に移行する割合を12%とし、入所者数を4%以上削減する。

②入院中の精神障害者の地域生活への移行
平成29年度までに、全都道府県の精神病院で入院後3か月時点での退院率を64%以上とする。また在院期間1年以上の長期入院者の地域移行を進めるため、入院後1年時点での退院率を91%以上とする。

③障害者の地域生活の支援
平成24年度の一般就労者数(8,501人)を基準として、平成29年度に一般就労者数を2倍に増やす。平成25年度の就労移行支援事業の利用者数(30,007人)を基準として、平成29年度には就労移行支援事業の利用者数を60%増やす。

④福祉施設から一般就労への移行
就労移行支援事業を利用している障害者等の一般就労への移行率を、平成29年度末までに50%以上とする。

いずれの目標も地域生活への移行を念頭に置いたものとなっていますが、②の精神障害者の地域移行に関して気になる動きがあります。それは、「病棟転換型居住系施設」です。
我が国の精神病床は35万床でそこに約32万人が入院をしています。そのうち1年以上の長期入院者は20万人に上るそうで、これは世界的に見ても例がないほどの多さです。入院治療の必要性がないにもかかわらず、退院後のサポートや地域生活を営む上での社会資源が少ないために退院できない状態を社会的入院などと言いますが、こうした状況には多くの批判があり、病院から地域生活への掛け声のもと、地域移行の目標数値が掲げられているわけです。
厚生労働省の検討会などでは、地域移行のひとつの形として、現在ある精神科病院の病棟の一部を、「病棟転換型居住系施設」に転換する構想が急浮上しているようです。退院後の地域移行が進まないのは、家庭の受け入れ拒否や所得がなく生活基盤が確立できないこと、グループホームなどの地域資源や地域サービスが圧倒的に足りないことなどが要因として考えられますが、退院後も病院内に留め置こうとする力が働いているためと思わざるを得ない背景もあります。地域移行に伴い精神病院のベッド数が削減されることは病院経営上の問題に直結するからです。「病棟転換型居住系施設」という発想は、作りすぎた病床を削減せず、いかに活用するかの観点から生まれたことは明らかです。これが実現すれば精神科病院に長期入院している人たちは地域に帰れず、病院内に留まることになるでしょう。これを地域生活などと言わせるわけにはゆきません。

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明治時代以降、1996年に「らい予防法」が廃止されるまでの長きにわたって、ハンセン病患者は療養所へ強制的に隔離され続けました。1940年代に特効薬が開発され、治療法が確立されてもなお、日本はこの法律を存続させました。過酷で不条理な人権侵害を受け続けながら、人生の大半を療養所の中で過ごすことになったハンセン病療養所多磨全生園で暮らす入所者は240人余り、平均年齢は83歳になるそうです。障害者権利条約がようやく承認された今、国はまた同じ間違いを繰り返そうとしているのでしょうか。

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