司法書士 高橋 聡英
前回(2015/1/26)の続き
今回は、(審判確定後)後見人に選任されてからのお話です。
1 最初の仕事は何ですか? ――― 財産目録と収支予定表の作成
後見人等は選任後、まず次のことをしなければなりません。
①被後見人(以下「本人」といいます)の財産目録を作成し家庭裁判所に提出すること
②本人の年間収支予定を立てること
財産目録の作成が終わるまでは、後見人は「急迫の必要がある行為」しかできません(民法第854条で定められています)。ですから、本人の財産を明らかにするために、まずは財産目録を作成し提出してください。
2 他にどんな仕事がありますか? ――― 職務の遂行
① 申立のきっかけとなったことが特別にある場合、これを行います。例えば、遺産分割、施設との契約、預貯金の引き出しなどです。
② 上記の行為が完了しても、後見人等としての職務が終了するわけではありません。後見人等は、本人の財産を保護するという義務があります。東京家庭裁判所では、下記のことが重要であるとして文書で説明しています(東京家庭裁判所・同立川支部 「成年後見申立の手引き」平成26年3月版より抜粋)。
・本人の財産の運用は、投機的なものは認められていません。元本保証されているものだけです。
・本人の利益に反して本人の財産を売却したりしてはいけません。ただし、例えば施設に入所するため多額の金銭が必要で、その費用捻出のため自宅を売却することなどは、家庭裁判所が許可すれば認められます。
・成年後見人等(自分)自身などに対する貸し付け・贈与はできません。
③ 本人の財産から支出することが許される事例として、次のようなものがあります。
・本人自身の生活費
・本人が第三者に対して負っている借金の返済
・成年後見人等がその職務を遂行するために必要な経費(手数料など)
・本人が扶養義務を負っている配偶者や未成年の子などの生活費など
3 日常的に行うことは何ですか? ――― 財産管理
上記のとおり後見人等は、「本人の保護」を第一に行動すべきこととなります。したがって、本人の財産と後見人自身の財産とをきちんと区別し、管理することが求められます。後見人になると、本人の預貯金管理等ができる反面、責任も生じます。
財産の管理については、通帳や証書類を保管し、現金出納帳を作成して、収入・支出をきちんと管理することが求められます。(続く)