Daily Archive: 2020年1月20日

ゼンコロ研修「第5回発達障害研修会」に参加をして

12月5日、6日の二日間に渡って、ゼンコロの「発達障害者研修会」に参加をしてきました。その内容をご紹介します。

1日目:(株)ビジネスメイト(特例子会社)/畑deきっちん 見学

ベネッセコーポレーションの特例子会社として障害者雇用に積極的に取り組む「ビジネスメイト」と、農産物の生産、販売、レストランの運営と当事者の働く場の提供を続けてきた草村の会「畑deきっちん」を見学。

「ビジネスメイト」では、清掃作業やリサイクル作業、メールサービスの他に、総務窓口の運営(消耗品管理、会議室の管理など)、社内資料などの印刷業務など多岐に渡った作業の切り出しをおこなっていた。どの職場でも当事者の方々がテキパキと働いている姿が印象的で、会社がそれぞれの個性、適正を見極め、適材適所を心がけていることがわかった。

「畑deきっちん」をはじめとする草むらの会の事業は、当事者の方々のやりがいや居場所を確保しながら、ビジネス的手法で経営をおこない、利益を出し、給料に結び付けていることが印象的だった。

 

2日目:「支援者に知ってもらいたい自閉症スペクトラムの世界」講師・綿貫愛子氏

綿貫氏自身が自閉症スペクトラムと診断され、多くの当事者の気持ちや考え方、世界の見え方に共感することが多々あるとのこと。

当事者であり、研究者であり、臨床発達心理士として数々の現場に出かけ、支援者でもある綿貫氏ならではのリアルなお話は、何度も「なるほど!」と感心させられ、目からうろこが落ち、当事者に寄り添う支援とはどういうことかという根本的な姿勢を考えさせられ、自分を振り返るきっかけをいただいた。お話の中で発達障害の方を支援するにあたって大切にしたいポイントをいくつかご提示いただいた。特に印象に残ったことをいくつか挙げさせていただく。

・ASD(自閉症スペクトラム)は社会性やコミュニケーションの障害なのか?
コミュニケーションの障害と言われるASDについて、研究者の中でこのような意見がある。
「ASD者は社会性やコミュニケーションに障害があるのではなく、多数派の人々が共有しているデザインとは異なる社会性やコミュニケーションを持つ可能性が示唆されている」
「ASD者は共感する。ASD者は、日常生活を送るなかで多数派であるTD者(定型発達症候群)の行動や社会を理解しようと努め、TD者の社会性を身につけている。一方でTD者はASD者には理解を示さず自分と違う他者について排他的であるとのデータがある。共生社会に向けて、ASD者だけが変わる努力をすればよいのか?

・支援はコワイもの
コントロールされた知識と技能の提供、自分らしさを得る前に特定の価値観を与えすぎること、支援する側、される側で生じる上下関係、支援者の支援、決定が生涯に渡って影響することなど、支援にはコワイ側面があることを知ってほしい。
支援で大切なことは、本人が作った自分のスタイル、目的があることが前提で、将来に向けてがんばれる本人に寄り添い、自分なりの折り合いがつけられるようにすること。

・安心して失敗できる
発達凸凹特性上、絶対に失敗する。しかし、失敗を予防し、先回りする支援が多すぎる。自分とふつうの価値観とのズレを感じて、混乱、緊張状態が続くと、不安感、自罰感情、攻撃性、防衛性が増し、やがて心身が疲労して二次障害をまねくことになる。
よい支援とは、予防ではなく失敗したときにどうするか、リカバリーを大切にすること。失敗の計画と目標を立て、その上でリカバリーを経験させる。
健常者モデルから脱却し、安心して失敗できる環境、支援体制があるといい。そして、失敗を失敗のままで終わらせない、修正の機会を大切に。

・楽しくなければ支援じゃない。
凸凹であることを尊重し、凸凹を楽しむ。自分が受けたいと思う支援かどうか、心にきざもう。

(A.O.)